クラウド会計を検討している中小企業は多いと思います。
経理部門ってお金を生むところではないから、なるべく自動化させてコストを掛けないという方向に世の中がシフトしていますよね。
マネーフォワードもそうなのですが、クラウド会計を導入すると、お金の流れの把握を自動化することができます。会社の資産状況などは一発でわかるし、資産運用のプラットフォームとしても使えますからね。
でもこのデータって、金融機関にとっては喉から手が出るほど欲しいはず。
そこで、freeeが新しいサービスを始めました。
freeeは2015年12月14日、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行など11の銀行との協業を発表した。freeeのユーザーである中小企業、個人事業主の会計データを閲覧できるサービスを協業する銀行に対して提供、新しい金融サービスの検討、開発を進める。会計データを与信業務などに活用することで、銀行にとって今まで融資判断が難しかった企業に対しても融資が可能になる、といったメリットがある。
freeeは同日付で金融機関向けに、「freee 金融機関アドバイザーアカウント(β版)」のサービスを提供開始した(図)。freeeユーザーの許諾を受け、金融機関が会計データを閲覧できるというものだ。許諾を受けていないユーザーのデータは共有しないとしている。freeeは同サービスを利用する金融機関それぞれと、会計データを使った新融資サービスの開発などを検討する見込み。
顧客データを売る
始まったばかりのサービスなので、あまりケチは付けませんが、要は顧客データを売るということです。
顧客データを銀行が買って、与信管理に利用するのです。この企業には更に貸しつけても大丈夫とか。こっちの企業は危ないからそろそろ資金を引き上げようとか。
与信管理とは?
与信管理とは、金融機関が「この企業と取引しても大丈夫か」ということや、「この企業にいくらまで貸し付けて取引額を増やしても大丈夫か」という判断を行い、取引金額を設定することです。
オフラインからオンラインへ
銀行の与信管理は、今までオフラインの決算書を元におこなっていました。これが、クラウド会計のデータを活用することによって、リアルタイムのオンライン上で与信管理ができるようになるのです。
オンラインだとリアルタイムのデータが分かるので、銀行にとって焦げ付くリスクが軽減されます。銀行のビジネスモデルって金利と手数料なので、利益が出ている顧客には最大限貸付をしたい、逆にカツカツの企業からは焦げ付く前に資金を引き上げたいわけです。
与信管理を放棄した地方銀行
半沢直樹の世界では、都市銀行が地方の中小企業にお金を貸していますが、現実的にはあまり無いです。
実際に中小企業にお金を貸すのって、普通は地方銀行か信用金庫になるのです。が、地銀って与信を放棄していると思いませんか?
だって中小企業がお金に困ってる時に、将来のキャッシュフローを予測してお金を貸すことができてないですから。土地を担保に貸すくらいしかできないわけです。
地元に横浜銀行というのがあるけど、都市銀行になりたい症候群が見え見え。地元の中小企業が困ってても、危ないと思ったらすぐ資金引き上げますからね。ちなみに歴代頭取は財務省の天下りポスト。生え抜きが頭取になれないって行員のモチベーションはどうなんだろう?
今後の貸付業務は?
銀行や金融システムの作り替えが、ここ5年以内で行われると言われています。業界再編のようなことも起きるはずです。
だって、与信管理がネット上でできて、ネットでお金を貸すことができるサービスが始まれば、銀行は不要ですから。
そうなると、クラウド上で企業の財務データを把握しているマネーフォワードやfreeeの存在価値が上がってくることになります。
マッチングサービス
クラウド会計のデータを銀行が利用するだけなんてもったいない。銀行以外にもお金を持っている企業はあるのです。
例えば、メタップスやPaypalは、入金された資金をプールしておくので、潤沢なキャッシュを持っています。
フィンテック以外でも、フリマアプリで有名な「メルカリ」だって資金がプールされる仕組みなのでキャッシュをたくさん持っています。メルカリで商品が落札されると、売り上げは一度メルカリに貯まります。出品者が引き出す際、1万円未満の売り上げの場合210円の手数料がかかるので、手数料がかからない1万円以上の売上金が溜まってから出金することが多いのです。今後、ヤフオクとかもこういう仕組みになりそう。
メルカリなどの企業が参入してくることは間違いない。
マネーフォワードやfreeeは、銀行以外にもお金を持っている企業とのマッチングを行えば、貸したい側と借りたい側にとってメリットが出るはず。
でも貸金業法の法規制があるので、一筋縄ではいかないかもしれませんが・・・
フィンテック企業の参加は?
クレジットカードリーダーを扱っているSquareやPaypalなどは、どのようなサービスを展開していくのでしょうか?これらの会社で、お金の流れがどのようになっているのか見てみます。
クレジットカード決済のビジネスモデル
2通りあります。特に後者の「入金をプールするビジネスモデル」は潤沢なキャッシュを持つことになります。
とはいえ、楽天スマートペイでも、振込手数料が無料の楽天銀行を利用しているユーザーが多いので、楽天銀行が潤沢なキャッシュをもっていることになるんですが。
即日入金のビジネスモデル
支払いは1日から2日の事業日のうちに使用者の銀行口座に直接入金されます。
- Square
- 楽天スマートペイ
入金をプールするビジネスモデル
サービスの口座にプールされます。ユーザーがお金を引き出すには手数料が必要なので、ある程度溜まってから引き出すことになる。銀行口座のように運用するケースが多いです。
- メタップス(SPIKE)
- Paypal
- Coiney
フィンテックの貸付業務
Squareが日本に登場して依頼、小規模事業者にとって店舗へのクレジットカードの導入のハードルは下がりました。
プールするビジネスモデルの場合、その間のお金は自由に運用することができます。メタップスやPaypalが、クラウド会計と連携したら、すぐにでも貸付業務はできるはず。メタップスは、先日マザーズに上場してるし、元金融担当大臣の竹中平蔵氏がアドバイザーにいるわけだしね。
今後のフィンテック
日本では、未だに請求書を紙で発行して郵送している企業が多くないですか?無駄以外の何物でもないですよね。
先日、クラウド請求書のエントリーを書きましたが、請求書の郵送ってどのサービスもやってるので、きっと需要があるのでしょう。
当社では郵送はしないけど、請求書のPDFをメール添付してます。でも、これも古臭い。
アメリカでは「トレードシフト」という会社があって、双方で管理画面を見て承認する感じです。進んでいますよね?
ここに銀行口座まで含めてコントロールできるようになれば、業界再編が起きるはず。取引がオンラインである程度モニタリングできれば、与信管理ができますからね。
今後、法人の取引をオンライン上で、バーチャル化していくことになることは間違いない。
お金が必要なところへ、必要な金額を融資できる環境が整いつつあります。
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