iPhone7にSuicaが搭載されました。
で、疑問に思うのは、なんで iPhone7 の本体裏に「総務省指定」の刻印があるのかということ。
だってモバイルSuicaに対応しているAndroidやガラケーには「総務省指定」の刻印ないですからね。
でも、iPhone7に「総務省指定」の刻印があるのに、モバイルSuica対応のAndroidに刻印がない理由を説明しているサイトは皆無でした。
iPhone7でSuicaが使えるだけでいいなら、モバイルSuica対応のAndroidと同じ仕様にすれば、「総務省指定」の刻印なんていらないと思いませんか?
iPhone7とAndroidで一体何が違うのでしょうか?iPhone7は、Apple Payの上にSuicaのシステムを載せているから、Androidやガラケーとは違うということは、なんとなく分かりますけどね。
疑問だったので、総務省 電波環境課に電話して確認してみました。
「総務省指定」の刻印が必要なケース
電話に出てくれた総務省の担当者に、「なぜiPhone7には「総務省指定」の刻印があって、モバイルSuicaのAndroidにはないのか」と伺ったところ、個別の事案については答えられないとのこと・・
そこで、「総務省指定」の刻印が必要なケースについて伺ったところ、「総務省指定」の刻印がどんな時に必要な条件について答えてくれました。
総務省の担当者の話では、iPhone7が、以下の2つに該当するため、「総務省指定」の刻印が必要とのことでした。
- 10KHz以上の高周波電流を利用する機器
- 「電界強度」が、毎メートル500マイクロボルトを超える場合
10KHz以上の高周波電流を利用する機器
iPhone7は、10KHz以上の高周波電流を利用する機器なので、総務大臣の許可を受ける必要があります。
でも、スマホは、電波法第百条に記載のある「その他総務省令で定める通信設備を除く」に該当するため、総務大臣の許可はいらないという例外規定を適用できるようです。
第百条 左に掲げる設備を設置しようとする者は、当該設備につき、総務大臣の許可を受けなければならない。
一 電線路に十キロヘルツ以上の高周波電流を通ずる電信、電話その他の通信設備(ケーブル搬送設備、平衡二線式裸線搬送設備その他総務省令で定める通信設備を除く。)
電波法第百条に記載のある「その他総務省令で定める通信設備を除く」を適用する場合、電波法施行規則 第四十四条に「許可を要しない通信設備」があります。
法律と施行規則ってやたら複雑で分かりにくいのですが、施行規則を見ていきましょう。
第四十四条 法第百条第一項第一号の規定による許可を要しない通信設備は、次に掲げるものとする。
二 誘導式通信設備(線路に一〇kHz以上の高周波電流を流すことにより発生する誘導電波を使用して通信を行う設備をいう。以下同じ。)であつて、次に掲げるもの
(2) 誘導式読み書き通信設備(一三・五六MHzの周波数の誘導電波を使用して記録媒体の情報を読み書きする設備をいう。以下同じ。)であつて、その設備から三メートルの距離における電界強度が毎メートル五〇〇マイクロボルト以下のもの
(3) 誘導式読み書き通信設備であつて、その型式について総務大臣の指定を受けたもの
「電界強度」が、毎メートル500マイクロボルト以下
誘導式読み書き通信設備において、3メートルの距離における「電界強度」が、毎メートル500マイクロボルト以下なら、総務大臣による「型式指定」を取得する必要はありません。ということは、スマホ本体に、「総務省指定」の刻印は不要です。
モバイルSuicaを内蔵したAndroidやガラケーは、「電界強度」が、毎メートル500マイクロボルト以下ということになります。
「電界強度」が、毎メートル500マイクロボルト以上
3メートルの距離における「電界強度」が、毎メートル500マイクロボルト以上の場合、電波法施行規則(3) にあるとおり、「型式指定」を総務大臣より受ければ、電波法第百条の総務大臣の許可を取らなくてもOKとのことです。「型式指定」を受ける場合、スマホ本体に「総務省指定」の刻印が必要になります。
iPhone7に「総務省指定」の刻印がある理由
今回のiPhone7は、3メートルの距離における「電界強度」が、毎メートル500マイクロボルト以上なので、「型式指定」を受けたために、本体に「総務省指定」の刻印が必要になったということです。
なぜiPhone7は「電界強度」が毎メートル500マイクロボルト以上なのか?
iPhone7には既存のSuicaを読み取るカードリーダー機能がありますが、Android端末にはカードリーダー機能はないためです。
iPhone7には、既存のプラスティックのSuicaをかざして、ICチップの情報をiPhoneに読み込めますよね?
Appleの説明によると、
Apple PayでSuicaを使い始めるには、まずiPhone 7をあなたのSuicaカードかSuica定期券の上に置いてください。あなたのSuicaの残額やSuica定期券の情報がすばやく転送されます。
この場合、プラスティックSuicaカードの保証料の500円は、iPhone7のSuicaへチャージされます。
【Apple Pay の安全性確保について】
安全性と個人情報の保護は、Apple Pay の基礎となる重要な要素です。iPhone や iPad、Apple Watch を紛失した場合も「iPhone を探す」機能で紛失モードに設定すれば、簡単にApple Pay のご利用を一時停止することができます。さらに「リモートワイプ」(遠隔消去)を実行していただくことで、端末に保管される個人情報を全て消去することも可能です。iCloud. com にログインして Apple Pay の支払いを停止することもできます。端末を紛失しても Suica のチャージ残高は保証されます。
これらの機能をiPhone7に搭載するにあたって、「10KHz以上の高周波電流を利用する機器」「3メートルの距離における「電界強度」が、毎メートル500マイクロボルト以上になってしまい、iPhone7に「総務省指定」の刻印が必要になったということになります。
古臭い法律は改正すべし
総務大臣の記者会見で、「総務省指定」の刻印についての話題が出ています。
総務省の高市早苗総務大臣は、20日の閣議後の記者会見において、iPhone 7/7 Plusの背面に刻印されている「総務省指定」の表示について話題になっていると聞かれ、これにコメントした。
高市大臣は「電波法に基づく表示。何ら問題のあるものではない」などとした上で、「スマートフォンの画面で表示できる制度の導入について、現在検討中」とコメント。今後は技適マークなどと同様に、画面の中に表示する電子的表示に対応させる方向で検討中であるとした。
「技適マーク」は、本体の外装ではなく、画面内の電子的な表示が認められています。
Appleでは、「技適マーク」だけでなく「総務省指定」も、電子的な表示にも対応しています。
ちなみに、日本の法律では、日本国内で使えるスマホは、「技適マーク」が入っている機種に限られます。Nexusシリーズなどのグローバルモデルのスマホなら、海外で購入した端末でも「技適マーク」がはいっています。が、Xiaomiなどの格安スマホは「技適マーク」はついてないです。法律上「技適マーク」が入ってないので、Xiaomiを日本で使うと違法です。
外国人観光客が日本を旅行する際、「技適マーク」のないスマホを使う場合は、例外措置で違法にならないのです。
まとめ
今までのモバイルSuicaは、機種変更にかなり手間がかかりましたが、iPhone7ならばiCloudでかんたんに手続きできるというのは素晴らしいですよね。
こういった機能をつけたので、iPhone7の「高周波電流」「電界強度」が一定以上の数値を超えてしまい、iPhone7に「総務省指定」の刻印がある理由になります。
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