2018年に準天頂衛星「みちびき」が4機体制で運用されると、位置情報システムの誤差は数cmとなります。GPSの誤差が10mと言われていますので、桁違いに高い精度になりますよね。
なぜ、準天頂衛星「みちびき」は、高精度測位を実現できるのでしょうか?
今日のエントリーは、準天頂衛星「みちびき」が高精度な測位を実現できる3つの理由について考えてみます。
準天頂衛星「みちびき」が高精度測位を実現できる理由
準天頂衛星「みちびき」が高精度測位を実現できるのは3つの理由があります。
- 日本の上空の真上から電波を発信する
- 電波を受信する衛星の数が増える
- 電離層による誤差を減らす工夫
1. 日本の上空の真上から電波を発信する
準天頂衛星「みちびき」は日本の上空の真上を周回します。真上から電波を発信することで、建物・障害物・山で電波が反射することがあっても、誤差の範囲は小さくなり、安定した測位ができることになります。真上からの電波は反射することが少ないため、高い測位精度を保つことができるのです。
GPSと比較すると、準天頂衛星「みちびき」は、マルチパスによる誤差が少ないと言えるのです。マルチパスとは、電波が建物・障害物・山で反射して複数のルートに進むことです。電波が反射すると、到達するまでに時間がかかるため、距離が遠いと計測されてしまいます。
GPS衛星はアメリカの真上にあり、日本でGPSの電波を受ける場合、斜め横から電波を受けることになります。このこともGPSの誤差が10mも出てしまう理由の一つなのです。
2. 電波を受信する衛星の数が増える
内閣府の宇宙開発戦略推進事務局のウェブサイトによれば、衛星測位の精度は、電波を受信する衛星の数によって決まると書いてあります。
現在のGPS衛星は、31機体制で運用されていますが、日本で常時可視となる衛星は5〜7機です。しかも多くのケースでは、受信可能な電波は6機以下となることが多く、1機でも受信できなくなるだけで、大きく測定精度が変わってしまいます。
衛星配置の誤差が減る
衛星の数が増えることで、上空の衛星が均等に配置されることになります。これにより、測位精度が上がります。
「みちびき」はGPSと連携できる
「みちびき」はGPSと連携して運用することが可能です。2018年から「みちびき」が4機体制になることで、既存のGPS衛星と合わせると合計10機の衛星からの電波を受信することができるのです。1機〜2機の衛星からの電波を受信できなかったとしても、安定した高精度な測位が可能となります。
3. 電離層による誤差を減らす工夫
準天頂衛星「みちびき」は、電離層による誤差を減らす工夫をしていることも、高精度は測位を可能にしている理由の1つです。
いきなり電離層という単語が出ましたが、ご存知でしょうか?
Wikipediaによると、
電離層とは、地球を取り巻く大気の上層部にある分子や原子が、紫外線やエックス線などにより電離した領域である。この領域は電波を反射する性質を持ち、これによって短波帯の電波を用いた遠距離通信が可能である。
分かりやすく説明すると、電離層とは、原子が太陽光線を吸収して、電子とイオンに分離した状態で存在するエリアということになります。高度60〜300kmまでの地球を取り巻く大気層となります。
電離層を電波が通過すると、電離層は電波を反射する特徴を持っているため、衛星からの電波が遅れます。なので、今までのGPSでは、測位精度を正確に測位することができませんでした。民間用のGPSは、1つの周波数の電波しか発信することはできないのです。
準天頂衛星「みちびき」は、1つの衛星から複数の周波数の電波を発信することができるので、電離層を通過する際の電波の遅れを計算することにより、高精度な測位を実現しています。
具体的には、L1信号と、L2・L5信号の周波数を組み合わせて測位することで、電離層での誤差を改善しているのです。
今後、準天頂衛星「みちびき」の数は増えるのか?
2017年10月10日に「みちびき 4号機」が打ち上げられるので、準天頂衛星「みちびき」は2018年に4機体制となります。
さらに2024年に、準天頂衛星「みちびき」は3機増えます。合計7機体制となるのです。
まとめ
以上、準天頂衛星「みちびき」が高精度測位を実現できる3つの理由でした。
今までのGPS衛星に加えて、準天頂衛星「みちびき」が運用されることで、高精度な測位が可能になります。2018年に4機体制になり、さらに2024年に7機体制となることで、高精度な測位ができることは間違いありません。
カーナビ・スマホ・自動運転に対して、準天頂衛星「みちびき」からの高精度な測位システムをフィードバックすることで、テクノロジーは、ますます進化していくことになりそうですね。
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