日本版iPhone7のみが、FeliCaチップを搭載して、Suica対応だとばかり思っていました。
iPhone 7のSUICA対応、Felicaチップが搭載されるのは日本で発売されるiPhoneのみ(なので海外のiPhoneはNG)。iPhone 7で今持っているSUICAにタッチすると全データが移行しiPhoneがSUICAに(以後プラスチックカードは使えなくなります)。
— Nobi Hayashi 林信行 (@nobi) 2016年9月7日
でも、どうやら違うようです。グローバルモデルのiPhone7にも、FeliCaチップは搭載されているようです。
「iPhone 7」シリーズは日本向けモデルのみFeliCaに対応しているとみられてきましたが、iFixitなどの分解により、世界各国で販売されている全てのモデルに同じNFCチップが搭載されている事が分かりました。
各種分解レポートをお伝えした時は気付かなかったのですが、iFixitは日本向けの「iPhone 7 (A1779)」と「iPhone 7 Plus (A1785)」を、Geekbarは米Verizonや中国・香港向けの「iPhone 7 (A1660)」を、Chipworksは米AT&Tや欧州向けの「iPhone 7 (A1778)」をそれぞれ分解しており、搭載されているNFCチップは全てNXPの「67V04」でした。
この「67V04」というチップの詳細は不明ですが、FeliCaとNFC準拠のType A/Bの両方に対応したチップとみられています。
このことからFeliCa対応の有無については、Apple側がソフトウェアで制限をかけているものと予想され、対応させるかどうかはApple次第であるものの、将来的にソフトウェアのUPDATEで海外モデルでもFeliCaが利用可能になる可能性もあることを意味しています。
ソフトウェアアップデートで新機能に対応するiPhone7
海外版のiPhone7にもFeliCaチップが搭載されているということは、AppleのiOSアップデート次第で、海外の人もSuicaが使えるようになる可能性があるということです。
iPhoneのようなグローバルモデルが、日本向けのiPhoneだけにFeliCaチップを搭載するってのは、おかしいなと思っていたんですよね。
全世界で発売されるiPhoneにFeliCaチップを搭載しておいて、Appleがソフトウェアで制限をかける方が、合理的ですからね。FeliCaチップにかかる費用なんてたかが知れてるしね。
テスラもソフトウェアアップデートで新機能に
これってテスラのオートパイロットも同じ構図ですよね?
以前書いたエントリーを引用します。
テスラがIT企業だなと思うのは、ハードウェアは1種類のみで、機能をソフトウェアで対応しているということ。車種は1種類でも、ソフトウェアで管理しているグレードが様々あるわけです。
ソフトウェア アップデートをすることによって、オートパイロット、リモート駐車機能が後付で使えるということは、あらかじめセンサー類やカメラがハードウェアである自動車に既に実装されているんですよね。で、それらを使って、新しい機能をどんどんソフトウェア・アップデートで追加していくという手法です。
テスラ・モーターズは6月9日(米国時間)、「Model S」の低価格モデルを発売した。「Model S 60」と、その4WD版である「Model S 60D」だ。
この低価格モデルを投入するにあたって、テスラはバッテリーパックの再開発も、組立ラインの刷新も、サプライチェーンの再構成も行う必要はなかった。数行のコードを書くだけですべてが済んだ。
「Suica」 vs 「Apple Pay」「Android Pay」
Suicaは、ソニーの開発したFeliCaチップを使います。FeliCaとは、非接触のICカードのことで、NFC「Type F」と呼ばれています。今まで「Type F」は日本国内でしか使われてなかったので、ガラパゴスなNFCと言われていました。
これに対して、グローバルスタンダードのNFCは、「TypeA」「TypeB」が圧倒的なシェアを持っています。iPhone6sやNexus5Xなどのグローバルモデルのスマホにも搭載されています。また、「Apple Pay」や「Android Pay」での決済は、「TypeA」「TypeB」を使ってやり取りをするのです。
でも、iPhone7にFeliCaチップが搭載されたことで、この流れは大きく変わるはず。
Suicaは世界規模で普及すると予測
わたくしの勝手な予測ですが、2020年の東京オリンピックの頃には、Suicaを使った決済が、グローバルスタンダードになってると思います。理由を説明します。
Suicaの決済スピードが早い
JRがSuicaに要求するスペックってめちゃ高いのです。朝の通勤ラッシュに耐えられるスペックを要求しているので、1分間に60人が自動改札を通過できなければなりません。
これには、Suicaをかざしてから、どんなに遅くても0.2秒以内に、電子マネーの決済が完了しなければならないのです。
ロンドンの地下鉄はApple Payを採用していますが、タッチしてから5秒近くかかって、ようやく自動改札が開くのです。日本の通勤ラッシュじゃとても使い物になりません。
JRはSuicaの世界標準化を狙ってる
今回iPhoneにFeliCaチップが搭載されたのは、JR東日本が相当頑張ったはずです。
以下、iPhone7発表会終了後の、JR東日本の小縣副会長のインタビューを引用します。自信に満ち溢れてるし、Suicaの世界標準化を狙ってる感じしませんか?
記者:(Felicaについて)今は日本のお客さんだけだと思うんですが、将来、海外の旅行客が使えるようになる可能性については?
小縣副会長:我々はインバウンドに力を入れていますからね。今日はこういった形での発表ではございますけれど、インバンドで日本に来られる方がですね、Suicaを使って頂くということになると、非常に良いんじゃないでしょうか。今インバウンドのお客様の数もどんどん増えていますからね。
記者:そういう風になるように、今、Appleと話をされているということなのでしょうか?
小縣副会長:色んな場を含めて、引き続きAppleとはお話をしていくことで、更に緊密な連携を保って良いサービスを提供したいと思います。
モバイルSuicaの面倒だった点
だいぶ前の話ですが、わたくし、ガラケーでモバイルSuicaを使っておりました。
面倒だったのは、ガラケーの機種変更する時です。
以下の流れでデータセンターにデータを預けるというのが面倒くさかったです。でも、今回のiPhoneとSuicaのコラボで、この面倒な手続きも解消されてる模様。
- 旧端末のSuicaの情報を、一度モバイルSuicaのデータセンターにデータ移行
- 新端末で、データセンターからデータを取り込む
JR東日本:モバイルSuica > 各種手続き > 端末の変更
Apple Payの上に乗っかったiPhoneでのSuica
今までのガラケーやAndroidのモバイルSuicaと比較すると、iPhone7のSuicaは、「機種変更をした際のSuicaの移行」「iPhone本体を紛失したときの手続き」などが圧倒的に楽です。
理由は、iPhoneのSuicaは、Apple Payの上に乗っているためなんですよね。
AppleのサイトにSuicaのことが詳しく書かれています。
あなたのSuicaの残額も、クレジットカードも守ります。あなたのiPhoneやApple Watchをなくしてしまったり、それらが盗まれた場合でも、Suicaの残額を回復することができます。「iPhoneを探す」を使えば、あなたのiPhone、iPad、Apple Watchをすばやく紛失モードにして、Apple Payの使用を一時的に止めることができます。これに加えて、デバイスを遠隔消去することも、iCloud.comにサインインしてあなたのカードをリモートで削除することもできます。
iPhone6s以前の古いiPhoneでSuicaを使うには
iPhone5以降のモデルと、Apple Watch Series 2 を使えば、Suicaを使うことが可能です。
でも、Apple Watchを常に身につけなければならないので、敷居が高いかも。
まとめ
今後、ハードウェアの製造メーカーは、グローバルスタンダードで同一製品を作って、機能制限をソフトウェアでかけるという時代を迎えることは間違いないですね。
廉価版モデルと高価格帯モデルもハードウェアは全く同じになる可能性もありますね。
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