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サイトが不要になっても、ドメインをずっと所有しなければならない理由

SEO

一度取得したドメインは、サイトが不要になったとしても、ずっと所有する必要があります。

理由は、悪意を持った第三者がドメインを取得して、別のサイトを運営する可能性があるからです。

今日のニュースで、2018年2月までNHK関連団体が使っていたドメインが、売りに出されているというのを見て、正直驚きました。

NHK関連団体の旧公式ウェブサイトのドメイン(インターネット上の住所)が、大手IT企業が運営する中古ドメインのオークションサイトに出品されていることが15日、分かった。NHKは同日夜、関係サイトに残っていたリンクの削除を始めたが、第三者がドメインを取得し、悪用される恐れがある。

売りに出されているのは、NHK関連団体が運営していた公式ポータルサイト「NHKグループネット」のドメイン「nhk-grp.jp」。サイト自体は2月に閉鎖されているが、今月1日に大手IT企業のGMOインターネットが運営するドメインオークションに出品された。

参考 NHK関連団体ドメイン競売に

NHK関連団体の担当者は、どんな認識でドメインを手放したんだろうね。
ドメインを手放した後、悪意を持った第三者が、NHKを装って、悪さをするリスクとか考えなかったのかな?

GMOインターネットが運営するドメインオークションとは、お名前.comのオークションですが、すでに「nhk-grp.jp」の値段は10万円を超えています。

NHKグループネット

今日のエントリーは、サイトが不要になっても、ドメインをずっと所有しなければならない理由を紹介します。

nhk-grp.jp はどんなサイトだったのか?

まず、nhk-grp.jp はどんなサイトだったのか、Wayback Machineで見ていきましょう。

過去のページを見ると、nhk-grp.jp は「NHKグループネット」というサイトで、加盟の関連団体が運営するポータルサイトと書いてあります。

関連団体には、「(株)NHKエンタープライズ」「(株)NHK出版」「(公財)NHK交響楽団」など、23団体が所属していたようです。

2008年にサイトを開設し、2018年の2月にサイトを閉鎖しているので10年間運営されていたことになります。

NHKグループ企業のポータルサイトの存在意義がなくなったので廃止したということなんだろうけど、10年間使っていたドメインを、サイト閉鎖後わずか8ヶ月で手放す必要は全くないと思います。ドメインを手放したら、第三者が悪用することぐらい、容易に想像できますよね。

.jpドメインを維持しても年間4000円程度

.jpドメインを維持する費用は、年間4000円程度です。10年間で4万円、100年間で40万円です。NHKともあろう大企業が、なぜこのコストをケチったのか、謎ですね。

手放したドメインを悪用された例

手放したドメインを悪用された例を見ていきましょう。

愛媛県新居浜市 運輸観光課 が運用していた観光サイト

愛媛県新居浜市 運輸観光課 が運用していた観光サイト (niihamakanko.com) は、2016年4月に市の公式サイトに統合されました。その際、観光サイトのドメインを手放してしまったので、悪意を持った第三者にドメインを取得されてしまいました。

観光サイトのコンテンツはそのまま再利用され、オンラインカジノの情報サイトへリンクを貼られてしまいました。興味のある方は、Wayback Machineのリンクを貼りますので確認してください。

閉鎖前の 愛媛県新居浜市 運輸観光課の観光サイト

閉鎖後、乗っ取られたサイト

当時のニュースを見ると、運輸観光課の課長が、旧ドメインの保有に年間約2万8千円がかかるという発言をしていましたが、そんなにかかりませんよね。どういう認識なんだろう。
.comドメインならば年間1000円〜1500円程度あれば保有できます。

以前僕は、逗子市役所観光課で公務員をしていたので、役所のネットリテラシーの低さはよく分かります。
役所の場合、取引のある業者以外は排除する傾向にあるし、このような例は散々見てきたので、1000円のサービスが2万8千円と聞いても驚きませんが、一般常識からかけ離れていることは間違いないですね。

内閣府主催のサイバーセキュリティに関する国際会議「Cyber³ Conference Okinawa 2015」で使ったサイト

内閣府主催のサイバーセキュリティに関する国際会議「Cyber³ Conference Okinawa 2015」で使ったサイトも、国際会議の終了後、ドメインを手放してしまいました。
ドメイン失効後、出会い系業者に取得されています。

サイバーセキュリティのイベントなのに、悪質な第三者にドメインを取得されるってどうなの?
今も出会い系サイトが表示されますので、URLは紹介しません。興味のある方は、ネットで調べてみてください。

特設サイトの運営は博報堂が担当。内閣府のサイトの外にドメインを取得して構築し、シンポジウムの開催案内や報告などを掲載していた。

特設サイトの運営は既に終了しており、博報堂は2017年度中にサイトのドメインも手放した。ドメインを手放す旨は、内閣府に事前に連絡しており、連絡を受けた内閣府は、このドメインを含むURLを、内閣府のサイトから順次、削除したという。

出典 IT media NEWS

使わなくなったサイトのドメインが悪意を持った第三者に取得されると、何が問題なのか?

手放したドメインを悪用された例でお話したとおり、悪意を持った第三者にドメインを取得された場合、同じURLで「スパムサイト」や「フィッシングサイト」「誘導サイト」を作られてしまいます。その結果、全く関係のないユーザーが被害にあうことが問題となります。

例えば、イベントを開催するときに、イベント用のドメインを取得してサイトを制作したとします。
イベント運営者は、イベントを周知する施策を打ちますよね?イベントに賛同したブロガーにイベントに関する記事を書いてもらえるようなコンテンツを制作したり、SNSでシェアしてもらったりするはずです。

もしあなたが、イベントに賛同してイベントページのURLをご自身のブログで紹介したら、いつの間にか、全く異なるサイトに変わっていて、オンラインカジノへの誘導リンクや、フィッシングサイトへの誘導リンクになっていたら怒りますよね?ブログの読者が、フィッシングの被害にあってしまう可能性もあります。

使わなくなったサイトのドメインを手放すことで、全く関係ない善意のユーザーが、被害にあう可能性が出てきてしまいます。

ドメイン保持に関する政府のガイドライン

ドメイン保持に関する政府のガイドラインがあります。
これは官公庁などの役所向けのガイドラインなのですが、正直、こんな運用でいいのという内容です。ガイドラインを見てみましょう。

Web サイト等の整備及び廃止に係るドメイン管理ガイドライン

新ドメインにサービス移行後も、旧ドメインのアクセス状況を踏まえるなどして、旧ドメインを1年以上運用し、旧ドメイン上で新ドメインの移行案内を行いつつ、廃止手続を行うものとする。

旧ドメインを1年以上所有してから廃止とありますが、1年という期間は短いです。
最低でも数年は所有しなければならないと思いますし、できれば、ずっと所有する必要があると僕は考えます。

さいごに

以上、サイトが不要になっても、ドメインはずっと所有しなければならない理由についてお話しました。

イベントなどで新規ドメインを取得してサイトを作った場合、イベントが終了しても、ドメインはずっと所有することを強くオススメします。