水素自動車について考えさせられる記事がありました。
経済産業省は今年3月、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を改訂し、フェーズ1として、25年までにFCV20万台と水素ステーション320カ所、また30年までにFCVは80万台程度普及を目標として掲げた。フェーズ2では水素発電を、フェーズ3では再生可能エネルギー由来の水素を活用することで、40年ごろには製造過程から二酸化炭素(CO2)を排出しない水素の製造、輸送、貯蔵の本格化を目指す。
資源の少ない日本では環境要因だけでなく、安定調達の意味でも水素利用は長年の課題だった。しかし、トヨタが15年にFCV販売に踏み切らなければ、ここまで構想は進まなかっただろうと資源エネルギー庁の水素・燃料電池戦略室の片山弘士課長補佐は述べた。
現状では、FCVも水素ステーションもコストが普及の足かせとなっている。水素ステーション建設は1基当たり4億-5億円掛かる上、水素充てんに訪れるFCVの数も限られている。片山氏は、投資回収できない期間が長期化すれば、「プレーヤーが抜けて、水素社会への動きが突然止まることもあり得る」と語った。
国内の水素ステーションは、政府の補助制度を受け現在約80基が整備されている。しかし、FCVの数は、ホンダが今年3月に発売した「クラリティ・フューエル・セル」を合わせても1000台程度。水素ステーションには1日1台が充てんに来る程度で、採算は取れていない。
国策で水素自動車を普及させる意味ってあるの?
経済産業省とトヨタががっちりタッグを組んで、水素自動車を普及させようとしていることは間違いないです。
がっちりタッグを組むというのは、経済産業省が「水素自動車の販売」と「水素ステーションの普及」にガンガン補助金を入れるということです。
ミライを購入する際の補助金は、車両への補助金が約202万円。自動車税等が23万円が軽減されます。合計で約225万円も助成されるのです。
車両価格が7,236,000円なので、202万円補助金があるということは、車両価格の27.9%が助成されるということになります。こんなに補助金漬けにしてまで、水素自動車を普及させるメリットが全くわかりませんね。
水素自動車が普及しない理由
以下、水素自動車が普及しない理由をまとめます。
水素ステーションを作るコストが高い
水素ステーションは1ヶ所5億円の建設費、年間4000万円の運用コストがかかります。
それに対して、EVステーションは、急速充電ができるタイプでも、1ヶ所500万〜1000万円で建設できます。
現状、水素ステーションは約80基しかありません。
普及するには、政府の補助金を入れることになるんだから、その費用でEVステーションを作ったほうがいいですって。
EVステーションの数
日本中にどのくらのEVステーションがあるのかご存知ですか?
- 普通充電スタンドが13786ヶ所
- 急速充電スタンドが6957ヶ所
合計で20743ヶ所あります。なんと水素ステーションの259倍多いのです。
20000ヶ所の水素ステーションの建設コストは?
水素ステーションの建設費用は1ヶ所5億円ですから、20000ヶ所を製造すると、10兆円のコストがかかります。
これに対してEVステーションならば、20000ヶ所の建設コストは、500億円〜1000億円しかかかりません。
誰がどう考えたって、電気自動車を普及させるべきです。
水素製造過程でCO2の排出量は多い
CO2というのは二酸化炭素のことです。
水素自動車は、HV(ハイブリッドカー)よりもCO2が多いです。
FCVは運転時の排出ガスはゼロだが、化石燃料から水素をつくる過程から見るとHVよりもCO2の排出量が多い。このため国は褐炭(かったん)という低品位の石炭資源と水を反応させて水素をつくり、同時に発生するCO2は回収して貯留する技術(CCS)を用いることを検討している。
それならば、HVよりCO2の排出量が少ない電気自動車の方がいいですよね?
水素自動車は参入障壁が高い
水素自動車は、水素の引火のしやすさ、貯蔵の難易度が非常に高いので、効率が悪いのです。このあたりを解決できるのは、既存の自動車メーカーが莫大な開発費を投入しない限り、不可能です。
電気自動車ならば、エンジンを開発する必要がないので、ベンチャーの参入障壁はぐっと下がります。低コストで自動車メーカーになれますからね。
水素自動車は参入障壁が高いので、自動車の価格は高止まりするだろうね。
なぜトヨタは水素自動車を作るのか?
世界的には電気自動車が普及しまくっています。この流れは変わらないはず。電気自動車はローコストで作れるのが特徴です。
部品点数だってガソリン車の1/100〜1/300になるし、コストもかなり安くなります。電気自動車なら、新車が30万円で購入できるんじゃない?
で、電気自動車が普及するとどうなるのかというと、電気自動車ならば、参入障壁は低いので、ちっちゃな自動車メーカーが乱立すると言われています。
トヨタが水素自動車に力を入れるというのは、参入障壁を高くしたいという理由もあるはず。
政府が水素自動車の普及を進める理由
政府が水素自動車の普及に躍起になっているのには理由があります。
資源の乏しい日本は、自動車産業の輸出がなくなったら、外貨を稼ぐ手段がありません。
自動車産業が衰退した場合、雇用への影響も大きいしね。
だから、参入障壁の高い水素自動車を官民一体になって推進しているのです。
まとめ
電気自動車は機関部品がバッテリーと制御システムなので、ベンチャー企業がコストを掛けずに参入することが可能です。参入障壁はめちゃ低いのです。
となると、あっという間に技術が陳腐化して、競争原理が働くことで、製造コストが安くなることは間違いないです。
世界的に電気自動車が普及していくのは間違いないので、わたくしは、水素自動車は全然普及しないと予測します。
政府が税金を投入してまで、水素自動車の普及に力を入れたとしても、ガラケーのように世界中から取り残される可能性は高いのです。
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