活字離れが加速しています。
書籍や雑誌が全然売れない理由として、昨年から定額制の音楽配信や動画配信が始まっていて、余暇時間の争奪戦が始まっていることも原因の一つです。
今年1年間に国内で出版された書籍と雑誌の販売額が、前年より約5%減の1兆5200億円程度にとどまり、過去最大の落ち込みとなる見通しであることが28日、出版科学研究所(東京)の調べで分かった。
今年の出版物販売額、落ち込み最大に240万部超
続いて、出版業界全体の売上の推移を見てみます。
以下の図は、帝国データバンクが発表した、過去5年間の出版社と取次と書店の総売上の合計です。2008年の6兆3495億7500万円 → 2013年の5兆997億3500万円と19.7%減少しています。
今日のエントリーでは、今後の出版業界についてお話します。
出版流通の仕組み
紙の書籍と電子書籍で異なります。
紙媒体の書籍
読者に届くまでの流れはこんな感じ。
- 著者 → 出版社 → 印刷所 → 取次 → 流通 → 書店 → 消費者
書籍の金額から、取次が8%、書店が21~24%を中抜きします。
電子書籍
電子書籍になると、KindleやiBooksなどの電子書籍のプラットフォームから、ユーザーは直接ダウンロードします。
そのため、印刷所・取次・流通・書店の中抜きがなくなります。今までの中抜してた利益は、著者・出版社・プラットフォーム・消費者へ分配されるのです。
読者の届くまでの流れはシンプルになります。
- 著者 → 出版社 → Kindle・iBooksなどの電子書籍のプラットフォーム → 消費者
電子書籍のプラットフォームとは?
コンテンツの枠組みを構築して、流通させる仕組みを提供しています。
紙媒体の書籍の場合、印刷所・取次・流通・書店を一括りにしてプラットフォームの役割を果たしますが、電子書籍だとAmazonやAppleが1社で代替します。
取次とは?
出版社と書店の間をつなぐ流通業者なのですが、日本は再販制度という特殊な事情があって、取次の力が出版社より強いです。
- 日販 7044億4900万円
- トーハン 5034億8400万円
- 大阪屋 948億8000万円
インターネットが普及する以前は、取次は莫大な力を持っていました。
日販、トーハン、大阪屋というごく一部の取次が、全国の書店への配本を取り仕切っていましたからね。全国の書店に書籍を並べるには、取次経由以外の手段はなかったのです。
この状況は、Amazonの登場により大きく変わることになります。
取次機能を内製化するAmazon
Amazonが取次の機能を内製化することで、将来的に取次は不要になっていくはずです。インターネットの本質は、中抜きを許さないということなので当然の流れです。
出版流通構造の歴史
みずほ銀行の調査結果が面白い。出版流通構造の歴史が詳しく載ってます。
江戸時代末期
出版・卸・小売業の複合流通で、書籍出版が中心です。
明治時代
出版・卸・小売業の分化が始まり、新聞・雑誌流通の「東京堂」「良明堂」など大取次が登場。雑誌出版の発展します。
大正時代
大取次は雑誌流通の元取次と書籍流通の専門取次に分かれる。大手雑誌出版の台頭。
昭和時代(戦前)
政府による「東京堂」「北隆館」「東海堂」「大東会」の4取次の再編。出版社数が3000社から200社へ縮小。
昭和時代(戦後)
集配法により日本出版配給が解体。出版社の数が増加します。
出版社が生き残るには!
Amazonやその他の書籍のプラットフォームへの依存を最小限にすることです。
具体的には顧客との接点を、プラットフォームに委ねること無く、出版社が確保する必要があります。
ドワンゴの川上量生さんの「鈴木さんにも分かるネットの未来」を引用すると
いまのiTunes StoreやKindleストアにコンテンツを提供しても顧客との接点はAppleやAmazonに独占されるだけなのです。お客さんがコンテンツを購入した時、iTunesやKindleで購入したとは記憶するでしょうが、そのコンテンツがどこの出版社のものなのかということは通常はあまり意識されません。
また、コンテンツホルダーにはどのユーザーがコンテンツを購入したかの情報はもらえませんから、購入者限定でなにか、特別なマーケティングをおこなうこともできません。あるコンテンツを購入したひとに、他にどんなコンテンツを買えばいいかをリコメンドするのはプラットフォームホルダーの権利なのです。そしてプラットフォームホルダーたちにとってコンテンツはとっかえのきく消耗品であり、なにが売れるかを彼らが自由にコントロールできるのが、一番、都合がいいのです。
コンテンツホルダーがプラットフォームホルダーに対抗するためには顧客との接点を自分たちの手に取り戻さなければなりません。そのためには自分たちのコンテンツを誰がいつ購入したのかという情報を自らの手で管理しなければいけないのです。
出版社が生き残るために、出版社自らが著者のファンクラブを作ったり、定期購読者向けのサービスを展開が有効な策になることは間違いないです。
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