総務省が設置した有識者会議、「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」の報告書が総務省のサイトに上がっています。
モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合取りまとめ
この報告書を読むと、一体誰のために「スマホ有識者会議」を設置したのか、疑問に思ってしまいます。
総務省としては、有識者を集めて議論したガイドラインを、キャリアに遵守させるという建前になっているけど、完全に茶番です。
どの省庁もだけど、政府の有識者会議のメンバーは、役人の意向通りに動くメンバーしか集められないと言われています。総務省はあらかじめ、議論の着地点を決めた上で、「スマホ有識者会議」を設置しています・・政府に物申す的な意見を持っている人は、そもそもメンバーに入れてもらえません。
侃々諤々、議論を戦わせることなんて、政府の有識者会議では絶対にないのです。
「スマホ有識者会議」がどんなメンバーで議論しているかご存知ですか?
スマホの有識者会議のメンバー
総務省のサイトに掲載されています。
【構成員】
新美育文 明治大学法学部教授
相田仁 東京大学大学院工学系研究科教授
石田幸枝 公益社団法人全国消費生活相談員協会理事
北俊一 株式会社野村総合研究所プリンシパル
長田三紀 全国地域婦人団体連絡協議会事務局長
平野晋 中央大学総合政策学部教授
舟田正之 立教大学名誉教授
森亮二 弁護士
報告書を読みましたが、本気でこれらの指針を出しているのかな?実態分かってなさ過ぎだよね。
構成員がどんな実績のある人か知りたい方はググってください。
「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」の報告書の論点
この報告書の主な論点は4つあります。
- スマートフォンの料金について
- SIMロック解除について
- 端末購入補助の適正化について
- MVNOの競争環境について
1. スマートフォンの料金について
キャリアは利用者の実態に対応した料金プランを提供すべしと書いてあります。
でも、今の通話をしない時代に、かけ放題の料金プランしか選択できないdocomo・ソフトバンクとかどうなのって感じしませんか?auは通話の従量制プランがあるからまだ良心的です。
こういう点を指摘するのが、有識者の仕事なのに全然できてない。
2. SIMロック解除について
SIMロックが設定されないことが望ましいということが明記されています。
↓この件について、本日付の記事があります。が、総務省は実態分かってなさすぎる・・
契約中の大手携帯会社の回線を使っている格安スマホに変更する場合、他の通信会社で使えなくする端末の「SIMロック」の解除を不要にする。格安スマホの普及を促し、家計の負担抑制につなげる。
今回SIMロック解除不要になるというのは、auとソフトバンクの端末を指しています。docomo版スマホを持っている場合、docomo系のMVNOなら、今の段階でもSIMロック解除の手続きは不要で使えますからね。
具体的には、au版の端末を持っていてauからUQモバイルへ移行の場合や、ソフトバンク版の端末を持っていてソフトバンクからワイモバイルへ移行する場合です。現在のところ、SIMロック解除の手続きが必要なのですが、これを不要にするというものです。
↑意味なくね?結局、大手3キャリアでユーザーを囲い込むことになるのにね。
3. 端末購入補助の適正化について
MNPで実質0円をなくそうという話です。
先日MONOという実質648円で購入できる格安端末をdocomoが出しましたが、MONOを購入する人って完全に情弱なわけです。
だって、docomo版のiPhone6s 16GBは実質15,552円で購入できます。性能だって全然iPhone6sの方が上だし、2年後に価値が0円になるMONOに対して、iPhone6sなら3万円くらいで売れるんじゃない?このことをわかってる人なら、絶対にiPhone6sにしますって。下取りまで考えたら、実質MONOよりiPhone6sの方が安いんだから。
4. MVNOの競争環境について
MVNOへの接続料金を下げろという話です。
MVNOは各社ありますが、料金設定は、だいたい落ち着いてきましたよね?
MVNOへの接続料金を下げても、料金プランがこれ以上安くなるとは思えません。
実質0円がなくなって、増収増益のキャリア
総務省がガイドラインを作って、キャリアに介入すればするほど、キャリアの利益は増収増益になっています。
↓2015年の各社の決算です。
docomo・・・営業利益 7839億円(前年度比 +22.5%)
au・・・営業利益 8333.5億円(同25.2%増)
ソフトバンク・・・営業利益 6884億円(前年度比 +7%)
携帯ジャーナリストの岩田温氏もかなり批判的な記事を書いています。
総務省の有識者会議「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」は11月7日に開催された第3回を持って取りまとめに入った。昨年秋に実施した携帯電話料金値下げタスクフォースの第2ラウンドといえる今回の会議だが、結果的にガイドラインによる指導での限界を見せる結果となりそうだ。
高市総務相からキャリアに要請したガイドラインも、結局は抜け穴だらけの文言だったあげくに、あとから「これはダメ」とキャリアへ行政処分や指導が出されるケースが後を絶たなかった。たとえば、KDDIが株主優待として配った端末割引クーポンを、他の割引施策と組み合わせると結果的に「実質0円販売」になることがわかって、行政処分としてつるし上げられた。総務省のガイドラインで「株主優待も規制の対象」と明記されておらず、ルールが不明確だったせいで結果的に後出しじゃんけんの形でレッドカードを出されては、キャリアとしても守りようがない。
誰のための「スマホ有識者会議」なのか?
「スマホ有識者会議」がどのような経緯で設置されたかというと、
2015年秋に、安倍総理による「携帯電話料金を引き下げて家庭における負担を少なくする」という発言により、総務省の「携帯電話の料金その他の条件見直しに関するタスクフォース」で議論が始まったのです。
で、総務省に「スマホ有識者会議」が設置されて、大手キャリアに対して、様々な介入が始まりました。具体的には、大手キャリアに対して端末販売の適正化・ライトユーザー向け料金プランの提供という要請が始まったのです。
でも実際は、総務省の介入によって、ユーザーには何のメリットもありませんでした。ライトユーザ向けプランが登場したけど、たいして安くならないもんね・・・
総務省が介入すればするほど、大手キャリアに天下りがしやすくなるということは間違いないよね?ってことは総務省のための「スマホ有識者会議」なのかもしれません。
「スマホ有識者会議」が設置されて携帯料金は高くなった
「スマホ有識者会議」の設置によって、逆にユーザーの携帯料金は高くなりました。実質0円や一括0円がなくなったので、「スマホの端末代」+「2年間の通信費」の合計金額は高くなっています。
実質0円や一括0円がなくなって、大手キャリアの利益が上がったのは、先程見たとおりです。
実態を分かっていない有識者が議論しても、絶対に携帯料金は安くならないと、わたくしは以前から言っていましたが、実際その通りになりました。
↓スマホの料金を安くしようと思ったら、自分で情報を取って、安くなる方法を探さないとダメですね。
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