2018年1月22日から3月11日まで相乗りタクシーの実証実験が実施されました。
日本では相乗りタクシーは法律で禁止されていますが、どのような根拠で実証実験が行われたかご存知ですか?
今回の実証実験は、国土交通省が旗振り役です。国土交通省のサイトでもプレスリリースをしています。
ということで、相乗りタクシーの実証実験の根拠法令について、国土交通省に直接電話して確認してみました。今日は、相乗りタクシーの実証実験がどんな法律を根拠に行われたかについてお話します。
相乗りタクシーの実証実験が行われたのは、どんな法律が根拠なのか?
国土交通省に電話で確認したところ、相乗りタクシーの実証実験は、道路運送法 第21条2号を根拠法令として実施されたとのことでした。
う〜ん。なんだか堅苦しい法律名ですね・・
道路運送法 第21条2号とは?
道路運送法 第21条2号とは、乗合旅客の運送をすることができる例外規定が書かれています。
通常、タクシー業者などの運送事業者は、相乗りタクシーの運行は法律で認められておりません。ですが、道路運送法 第21条2号に基づいて国土交通大臣から許可を貰えば、相乗りタクシーを運行することが可能となります。
国土交通省の担当者の話では、2号に記載されている「一般乗合旅客自動車運送事業者によることが困難な場合において、一時的な需要のために国土交通大臣の許可を受けて地域及び期間を限定して行うとき。」を根拠に、乗合いタクシーの実証実験を行ったとのことでした。
要するに、地域は東京23区・三鷹市・武蔵野市に限定し、期間を2018年1月22日から3月11日に限定して、国土交通大臣の許可を受けて実験を行ったのです。
道路運送法 第21条は次のように書かれています。
第二十一条 一般貸切旅客自動車運送事業者及び一般乗用旅客自動車運送事業者は、次に掲げる場合に限り、乗合旅客の運送をすることができる。
一 災害の場合その他緊急を要するとき。
二 一般乗合旅客自動車運送事業者によることが困難な場合において、一時的な需要のために国土交通大臣の許可を受けて地域及び期間を限定して行うとき。
なぜ、相乗りタクシーの実証実験を実施したのか?
国土交通省は、uberPOOLやLyftなどの黒船が日本に上陸する前に、日本国内の乗り合いタクシーのニーズや、利用者属性などのデータを取りたかったんだろうね。
でもね、電話で聞いた話では、相乗りタクシーを利用した件数はあまり多くなかったとのこと。
理由を尋ねたところ、同じ時間帯に、同じ方向へ乗り合いタクシーを利用するユーザーが少なかったという話でした。具体的な件数は教えてくれませんでしたが、相乗りタクシーの件数は1週間で100件にも満たないとのこと。国土交通省は未だに実証実験の結果を公表してないし、公表するかどうかも未定という話でしたので、かなり少ない件数だったと思われます。
実証実験でタクシーを相乗りする利用者が少なかった理由は?
実証実験でタクシーを相乗りする利用者が少なかった理由は、次の2つの理由が考えられます。
- 国土交通省のプレスリリースで実証実験を発表したくらいで、タクシー利用者への周知が全然できていなかったこと
- 利便性が悪い
国土交通省のプレスリリースで実証実験を発表したくらいで、タクシー利用者への周知が全然できていなかったこと
大多数のタクシー利用者は、期間限定で相乗りタクシーの実証実験が実施されているなんて知らなかったはずです。だって国土交通省は、プレスリリースで実証実験を発表しただけですから。利用者への周知がもう少し行われていれば、利用者は多かったはずです。多少遠回りになっても、料金が半額になれば利用したいユーザーはいるはずなので。
利便性が悪い
乗車地点が限られているなど、uberPOOLやLyftなど比べると利便性が悪かったことも、実証実験でタクシーを相乗りする利用者が少なかったもう一つの理由です。この点を改善しないと、日本で相乗りタクシーは流行らないだろうね。この点については後述します。
相乗りタクシーのメリットとデメリット
今回の実証実験で、相乗りタクシーのメリットとデメリットについても可視化されました。
相乗りタクシーのメリット
- 1人でタクシーに乗車するよりも料金が安い (2割〜5割安くなった模様)
- 1台のタクシーを複数人でシェアするので、環境に優しい
相乗りタクシーのデメリット
- 相乗りする人を選べない
- 相乗りする人の降車地も選べない
- 自宅が同乗者にバレる危険性
- 遠回りするため、目的地に到着するまで時間がかかる
- 大和自動車交通グループは乗車地点が限られていた (日本交通グループは好きな場所から乗車できる)
日本で相乗りタクシーは流行るのか?
上記のデメリットを解消できるような仕組みを作らないと、日本で相乗りタクシーは流行りません。
上記の仕組みを、技術的に落とし込むことは、uberPOOLやLyftのようなテクノロジー事業ならば朝飯前です。
でもね、日本のタクシー会社は、自社でテクノロジーを開発できるわけではないので、どこまでデメリットが解消できるのかは謎。
規制緩和されて、日本で乗合いタクシーが運行できるようになった場合、日本のタクシー会社が我先にと参入してくることは明らかですが、uberPOOLやLyftの使いやすさには太刀打ち出来ないといった可能性は非常に高いですね。
さいごに
以上、相乗りタクシーの実証実験がどんな法律を根拠に行われたかについてでした。
2018年1月22日から3月11日までの実証実験は成功しなかった模様ですが、次回はもっと利用者に周知するなどの工夫をして、実証実験を再開してもらいたいですね。
uberPOOLやLyftだって最初から成功しているわけではないので、失敗に懲りず相乗りタクシーの実証実験は続けるべきです。
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