訪日観光客を呼び込むために、経済産業省が主導して、ガラパゴスなプラットフォームを作ったようです。
経済産業省は28日、外国人観光客が指紋などの生体認証で本人確認を行い、現金を使わずに買い物や温泉などが利用できるシステム「おもてなしプラットフォーム」の実証実験を、10月から関東、関西、九州の3地域で開始すると発表した。2020年東京五輪を見据え、あらゆる機器がインターネットにつながる「モノのインターネット(IoT)」を活用し、訪日客の利便性向上につなげる。
訪日客が来日時に、指紋や手のひら(掌紋)などの生体情報とパスポートやクレジットカードなどの情報を登録すれば、宿泊手続きや買い物時の支払いがスムーズになる仕組みを、地域ごとに導入する。
「おもてなしプラットフォーム」とは?
経済産業省が主導した決済プラットフォームです。
ショッピングや・免税手続き・ネット予約のワンストップ化と共に、指紋認証などで決済ができるというもの。
なんでこんなガラパゴスなプラットフォームを作ったのかは謎ですが、どんな経緯で作ったのか調べてみました。
政府の発行している資料を見ると、デロイトトーマツコンサルティング・DNPが戦略を決めて、JTB・パナソニック・三井住友カードが事業を運営するようです。
一応、2015年の経済産業省主催「おもてなしプラットフォーム研究会」で決めたことになってますね。
おもてなしプラットフォーム研究会が、約3か月に21回の議論を積み上げて、本日、最終回。訪日外国人観光客の持つ不満を解消すべくロジカルに構想されたサービスモデルが、実際に満足を齎すものとなりうるのか。構想は具体化の為にどこまで変化するか。2020年までの5年間は、決して長くはない。
— Teruyasu Murakami (@murakamit) 2015年3月12日
2016年2月に政府が公募しています。といっても、2015年から「おもてなしプラットフォーム研究会」で議論を積み上げていたようです。
平成27年度補正予算「IoT推進のための新ビジネス創出基盤整備事業(IoT活用おもてなし実証事業)」に係る委託先の公募について
「おもてなしプラットフォーム」のプラットフォームは大日本印刷が作った模様。
大日本印刷株式会社(東京都新宿区 代表取締役社長 北島義俊 以下:DNP)が開発したVRM(Vendor Relationship Management)システムを採用した経済産業省「おもてなしプラットフォーム」*1の実証事業が2016年10月1日にスタートします。
DNPのVRMシステムは、生活者が自身の個人情報を管理し、その情報を開示して利用したいサービス事業者を選択できる仕組みです。おもてなしプラットフォームでは、訪日外国人が1回の個人情報の入力による1つのIDで、日本各地のさまざまな事業者が提供するサービスを安全・安心に利用できるようになります。また、各地の事業者は訪日外国人の同意を得てその個人情報を活用し、言語や地域の壁を越えて、一人ひとりの興味・関心に沿ったサービスを提供することができます。
10月1日より、実証を開始するのは、関東・関西・九州の3ヶ所です。
<関東実証(湯河原・箱根・鎌倉)>
株式会社JTBコーポレートセールスを中心に、箱根・湯河原・鎌倉等で、生体(指紋)認証を使って、手ぶらでの決済、ホテル・旅館のチェックイン、各種体験プログラムへの参加など新しいサービス提供の実証を行います。<関西実証(大阪)>
パナソニックグループを中心に、大阪の商業施設等で、ユーザーのスマートフォン等で利用登録が可能な生体(手のひら)認証を用いた決済、LED光源を利用したスマートフォン等への情報提供などの実証を行います。<九州実証(福岡)>
株式会社ジェイティービーを中心に、福岡で、プレミアム付カード型商品券を発行するとともに、既存の訪日外国人向けスマートフォンアプリと連携をすることで収集される業種横断的な情報を活用した実証を行います。<「おもてなしプラットフォーム」の構築>
上記3地域での実証に加えて、様々な事業者や地域の連携を可能にする「おもてなしプラットフォーム」を構築します。デロイトトーマツコンサルティング合同会社、大日本印刷株式会社を中心に取り組んでいきます。既存のSNSや各種サービスとの連携等により、事業者や地域が提供するアプリやサービスごとに登録し直す必要をなくし、よりサービスを受けやすい環境を整備していきます。
【3社の役割】
パナソニック:実証とりまとめ、サービスコンテンツおよびシステム導入とりまとめほか
三井住友カード:加盟店契約、「旅前プロモーション」ほか
大日本印刷:新たな決済方式ゲートウェイほか経済産業省「IoT活用おもてなし実証事業」として、パナソニック、三井住友カード、大日本印刷等が、関西にて訪日外国人に対しモバイル決済サービス等を実施
訪日外国人に薦めるのはSuicaでしょ
「おもてなしプラットフォーム」に、訪日外国人が、指紋や手のひらなどの生体情報・パスポートやクレジットカードといった個人情報を登録すると思いますか?
わたくしが、アメリカやイギリスなどで、生体情報を登録しろと言われたら、拒絶反応示しますね。絶対に登録したくないもん。
訪日外国人にとって、日本を旅行した際に利便性が高いのは、Suicaを活用しやすくすることです。
日本の場合、すでにSuicaというプラットフォームが全国を張り巡らせているので、Suicaを活用したほうが絶対に便利ですって。
コンビニでもスーパーでも駅ナカでも使えます。公共交通機関も、首都圏だったら電車・地下鉄は全部乗れます。JRだったら関西や九州でも使えるでしょ?今使えないのは四国と東北の一部だけです。
日本を旅行するなら、Suicaはマストだと思いませんか?
iPhone7でSuicaが使える
JR東日本が頑張って、Apple Payの上にSuicaのシステムを載せることに成功したので、iPhone7ではSuicaが使えるようになりました。
iPhone7には、Suicaを利用するためのFeliCaチップが搭載されています。
今の時点では、Apple側でソフトウェア制御をしているので、FeliCaチップが有効でSuicaが使えるのは、日本で発売しているiPhone7だけです。海外で発売されているiPhone7は、FeliCaチップは搭載されているけど、今の時点ではSuicaは使えません。
政府がやるべきことは、Appleに働きかけて、海外で発売されるiPhone7にソフトウェアアップデートを行い、Suicaが使えるようにすることだと思いますけど。
で、旅館とか観光地でSuicaでの決済ができるようにすればいいのです。
今のところSuicaのチャージの上限は2万円だけど、上限なんて撤廃しても良いと思います。
Suicaはグローバル基準だとめちゃ高性能
Suicaは、ソニーの開発したFeliCaチップを搭載して、決済を完結するのですが、これは世界的に見てものすごく高性能なのです。
なんでiPhone7にSuicaが採用されたのかについて、過去のエントリーから引用します。
今回、なぜ AppleがType F(FeliCaチップ)を採用したのかといえば、「日本におけるiPhoneのシェアは60%を超えている点」「Suicaの利用率の高さ」「FeliCaの決済処理スピードが早い点」が認められたということなるのでしょうね。
Suicaの決済スピードはどのくらい早いか?
JRがSuicaに求める決済速度のスペックは、朝の通勤ラッシュでも自動改札に渋滞が起きない速度を目標にしています。具体的には、1分間に60人が自動改札を通過できるような仕様になっているのです。なので、Suicaの決済速度は、どんなに遅くても0.2秒以内に決済が完了するのです。
ロンドンの地下鉄は、グローバルスタンダードなType A/Type Bを使ったApple Payを採用しています。Suicaと比較すると、決済速度がどのくらい遅いのか、動画を見てみましょう。
タッチしてから5秒もかかります・・・日本の通勤ラッシュじゃ使い物になりません。
Suicaの不便な点
- エリアをまたがって使うことができない点
- 首都圏以外だと、私鉄やバスで使えないところがある点
こういった不便な点を改善していけば、Suicaの利便性は確実に上がります。
まとめ
指紋などの生体認証とクレジットカードを登録する「おもてなしプラットフォーム」よりも、SuicaがiPhoneでかんたんに登録できて、日本中どこへ行っても決済できる方が、訪日外国人にとって便利でメリットがあるはずです。
訪日外国人観光客が、指紋などの生体認証を登録するとは考えにくいですから。
日本政府は、2020年に4000万人の訪日外国人を呼び込むことを目標にしています。過去5年間で、訪日外国人の数は2倍以上に増えています。訪日外国人は以下のような推移で増加しているのです。
- 2010年 861万人
- 2011年 622万人
- 2012年 836万人
- 2013年 1036万人
- 2014年 1341万人
- 2015年 1974万人
呼び込んだ外国人にお金を使ってもらうには、決済環境を整える必要があります。
日本全国に張り巡らせたSuicaのプラットフォームを活用するとともに、Apple PayやAndroid Payの決済端末を全国の店舗に配ることの方が、訪日外国人の利便性が上がると思いませんか?
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