いよいよLINEが上場します。
7月14日にニューヨーク証券取引所へ、7月15日に東京証券取引所と、日米両市場へ同時上場です。IT企業では今年最大級の上場になります。
2年前に上場していれば、時価総額2兆円と言われておりましたが、すったもんだがあって上場が遅れてしまいました。
その結果、時価総額は6929億円と3分の1になってしまいました。
↓2016年7月15日 追記
7月11日のニュースでは時価総額6929億円と報道されていましたが、蓋を開けてみると、ニューヨーク証券取引所では終値は4400円ということで、時価総額は約9300億円と大成功でした。
なぜ上場につまずいたのか?
理由は2つあると言われていて、
- LINEが韓国のNAVERの100%子会社ということ
- ゲームで使うアイテムが、資金決済法で規制される「通貨」に当たるということが争点になっていたこと
無料通信アプリ大手「LINE(ライン)」(東京都渋谷区)が運営するスマートフォン用ゲームで使う一部のアイテム(道具)が資金決済法で規制されるゲーム上の「通貨」に当たると社内で指摘があったのに、同社は仕様を変更し規制対象と見なされないよう内部処理していたことが分かった。同法を所管する関東財務局は必要な届け出をせず法令に抵触する疑いがあるとして、同社に立ち入り検査するとともに役員らから事情聴取し、金融庁と対応を協議している。
資金決済法では、あらかじめ代金を支払い、商品やサービスの決済に使うものを「前払式支払手段」と規定。商品券やプリペイドカードのほか、オンラインゲームで「通貨」として使われるアイテムなども該当する。発行会社の破産で商品券やアイテムが使えなくなるなど万一の際に備え、未使用残高が1000万円を超える場合は半額を「発行保証金」として法務局などに供託し、利用者保護を図る義務がある。
LINEの株主構成
では、LINEの有価証券報告書を見ていきましょう。ここにLINEの株主構成が出ています。
LINEの親会社がNAVER Corporationということは皆様ご存知のとおりですが、保有する株式は、なんと全体の87.27%です。で、残りの12.73%を役員や投資家が保有しています。
保有する株式
親会社のNAVER Corporationがトップに君臨しています。
想定売却益が1億円を越えるのは10人です。日本人はめちゃ少ない。想定売却益の横のカッコ内の数字は、株式総数に対する保有率です。ちなみに想定売却益は、1株1320円で取得して2800円ですべて売った場合の金額です。
- NAVER Corporation 2589億8816万円(87.27%)
- シン・ジュンホ(取締役 CGO) 151億9146万円(5.12%)
- イ・ヘジン 82億4656万円(2.78%)
- イ・ジュンホ 24億2424万円(0.82%)
- パク・イビン(上級執行役員CTO) 1億6132万円(0.05%)
- 出澤剛(代表取締役CEO) 1億4282万円(0.05%)
- 舛田淳(取締役 CSMO) 1億3986万円(0.05%)
- キム・ソンフン 1億3320万円(0.04%)
- ヤン・ヒチャン 1億1840万円(0.04%)
- コ・ヨンス 1億1026万円(0.04%)
- ヤン・ソクホ 1億0286万円(0.03%)
- カン・ビョンモク 8732万円(0.03%)
- イ・ジョンファ 8362万円(0.03%)
- 池邉智洋(上級執行役員 サービス開発担当) 8214万円(0.03%)
- 森川亮 7770万円(0.03%)
LINE 主要役員のページの序列と、株式保有率は全然違うのが面白い。
メタップスと比べてみると
昨年の2015年7月28日に、佐藤航陽氏が率いるメタップスがマザーズへ上場しました。
創業者の佐藤航陽氏の株式保有率は、37.27%でダントツでした。東証一部に上場するLINEと、マザーズへ上場したメタップスでは、会社の規模が違うので単純な比較はできませんが、LINEのシン・ジュンホ氏の保有率5.12%の売却益150億円と変わらないですね。
他のIT企業を見ても、創業者の上場後の株式保有率は高いです。NAVER Corporationは創業者というよりは親会社ですが、比較のために入れました。
- NAVER Corporation 87.27%(2589億8816万円)
- シン・ジュンホ 5.12%(151億9146万円)
- メタップス 佐藤航陽氏 37.27%(148.5億円)
- 元ライブドア 堀江貴文氏 40%以上
- Softbank 孫 正義氏 19.26%
- 楽天 三木谷浩史氏 40.3%
- Cyber Agent 藤田晋氏 21.41%
上場後のLINEの戦略
グレーマーケットではIPO価格の15%増しの3800円の値が付いているようです。
上場によって集まる資金の総額は6929億円です。
調達した資金を、海外展開や成長戦略投資に充てるはずですが、アジアを中心としたガラパゴスなサービスを続けている限り、今後のLINEが成長するという要素はあまり感じられないんですよね。
メッセンジャーアプリを競合と比較してみると、
月刊アクティブユーザー数(MAU)は、WhatsApp 10億人、Facebook Messenger 9億人に対して、LINEは2億人をちょっと超えたところです。
日本や東南アジアなどLINEのスタンプ文化が入れる土壌のあるところでは強いですが、ヨーロッパ圏ではテキスト文化なので、LINEが拡がるのは難しそう。
今後の戦略は、日本や東南アジアなどのLINEユーザーが多く、独占的な市場シェアを取れるところと、そうでないところで戦略を分けるべきです。同じ戦略ではダメですね。
LINEのシェアが高い国での戦略
日本というガラパゴスなマーケットでは、メッセンジャーアプリとしてのLINEを核に、サービスを広げていくことはそんなに難しくないはず。
例えば、「LINEニュース」はMAUが2200万人と大成功しています。この数字は、2014年12月の「Yahoo!ニュース」に匹敵する数字です。数年前なら足元にも及ばなかったのですが、Yahooのスマホシフトが遅れたところに、上手いこと入り込みました。
あとは、LINE BLOG もうまくいってます。芸能人・有名人ブログをアメブロから奪いまくってますからね。
利益を上げるということを考えると、LINE Payで、オンライン決済とオフライン決済を押さえるのは有効だろうね。
LINEのシェアが低い国での戦略
アフリカなどのまだLINEが浸透していない国では、独占的な市場シェアを取れるようなサービスを行っている企業を買収していく感じでしょうか?
上場で得た資金を有効活用できればいいですね。
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