書店の数が著しく減少しています。
1999年に22,296店あった書店が、2016年には13,488店まで減っているので、過去16年で8808店舗が潰れたことになります。
このまま行くと、あと10年後には大手チェーン以外の書店が消えてもおかしくない状況です。
なぜ書店は街から姿を消してしまったのか?
様々な原因が考えられますが、以下の要因が複合的に絡み合っているのです。
- 日本人が活字離れしている
- ネット通販で書籍を買うようになった
- 電子書籍の読み放題が始まった
- 再販制度で返本できるので、商売にあぐらをかいていた
書店ビジネスの難しさ
↓Yahoo!ニュースで特集がありました。
丸善ジュンク堂代表取締役の工藤恭孝氏のコメントが書店ビジネスの厳しさを物語っています。
ネット通販や電子書籍が普及したことは、私どもリアル書店を経営する立場からすると、とても「厳しい変化」です。
雑誌の読み放題サービスの普及は、店頭での雑誌販売に大きなダメージを与えていますし、書店で立ち読みしているお客さんがその場でスマートフォンを取り出してネット書店で注文し、手ぶらで帰宅される姿を目にすると、私どものビジネスが、非常に厳しい状況に置かれていることを痛感します。
ただ、書店も、そうした状況を手をこまねいて見ているわけではありません。販売情報を管理するPOSシステムの開発や流通センターの整備もそうですし、出版社に頼らずかつての名著をPOD(プリントオンデマンド)で一冊から復刊させて商品の充実を図ったり、文房具売り場やカフェとの併設を進めたり、「ネットで買ったほうが便利だよね」と言われてしまわないように、できるかぎりの工夫は重ねてきています。
ただ、当然のことながら、こうした試行錯誤には、人的にも金銭的にもコストがかかり、そのコストを捻出するのにも四苦八苦している現状があります。そして、正直に申し上げて、書店というビジネスが置かれた厳しい状況を根本から覆すような妙案は、いまだに見いだせていません。
なぜAmazonは伸びているのか?
Amazonは消費者のニーズに答える努力をしています。
アマゾンジャパン合同会社の友田雄介氏のコメントを見てみます。
それは私どもが常に顧客目線に立ち、「欲しいものがすぐに手に入る」という基本姿勢に沿って、やるべきことを愚直にやってきた結果だと考えております。専門書など刷り部数が少ないものもきちんと揃える。購入する前に中身を確認しづらいネット書店の弱点を「なか見!検索」といったサービスで補う。開店当初から改善を積み重ねてきたレビューやリコメンド機能……様々な側面から、顧客のために努力を重ねてきました。
顧客目線を常に持つということが重要なのです。
なぜリアル書店は衰退しているのか
書籍の場合、ネットで購入すると送料無料で自宅まで配送してくれます。
消費者にとって購入する書籍が決まっている場合、わざわざ書店まで足を運ぶメリットがないということを肝に銘じないといけませんね。
また、再販制度の影響もあります。
再販制度とは
再販制度とは、出版社が設定した定価を、書店が割引したりで変更することができないかわりに、返本を認めるという制度です。
商売をやってて、売れなかった商品をメーカーに返品できるって、普通はありえません。が、書籍に関しては、割引ができない変わりに返本ができるのです。
なので、昔は地方の地主にとって、書店はチャリンチャリンビジネスだったのです。売れなきゃ返本すればいいだけなので。
書店にとっては返本ができるのはメリットですが、ユーザーのニーズを掘り起こした書籍を仕入れることができる書店は圧倒的に少ないですね。
アメリカでは書店が復活している
日本では倒産している書店が多い中、アメリカでは書店が復活しています。
なぜ復活しているのか見ていきましょう。
- 紙の本の価値が再認識されてきた
- Amazonの検索でも拾いきれない、地域の人々の宗教、民族、文化の細かな差異とそれに基づくニーズに、独立系書店が応えるようになった(ハイパーローカル化)。地元出身の作家、地元にちなんだ作品を積極的に並べるなどの試みも功を奏した。地産地消運動(バイ・ローカル運動)もこの動きを後押しした
- オーサービジットやサイン会だけでなく、講演会、ライブ、創作講座、子供向けの店内キャンプなど、本とは直接関係ないものも含めて、リアル書店でしかできないイベントを頻繁にしかけるようになった(コミュニティセンター化)
- 書店がオリジナルグッズを販売するなどして、地域にブランドロイヤリティを醸成するようになった(ブランド化)
Amazon Booksというリアル書店
アメリカではAmazonもリアル書店をシアトルで展開しております。
日本でも東京にAmazon Booksが登場する日が近いかも。
以前のエントリーを紹介します。
今後、今以上にユーザーの購買パターンが、ネット通販での書籍購入や電子書籍にシフトしていくとなると、書籍市場の縮小は避けられません。
となると、書籍市場の規模の維持にかかるコストを誰が負担するかということになります。プラットフォームであるAmazonが負担していくという話になっていうはずです。
米Amazonは、すでにAmazon Booksというリアル店舗を運営しています。書籍のプロモーションのための書店を、Amazonが直営しているのです。
リアル書店が生き残るには
今後のリアル書店が生き残るための方法を考えてみました。
- ユーザーにとって何がメリットなのかを考える
- ターゲットを絞り込む
- 書籍をキュレーションする
- 出版社から直接書籍を仕入れて販売すべし
1. ユーザーにとって何がメリットなのかを考える
Amazonや楽天ブックスなどのネット通販で書籍を購入するよりも、リアル店舗で購入するメリットがなければ、ユーザーはリアル店舗で書籍を購入しません。
ユーザーがネット通販で書籍を購入するメリットとして、ポイントがあります。Amazon・楽天・hontoで書籍を購入すれば、ポイントが溜まりますからね。
ポイントをつけるリアル書店も数多くありますが、ネット通販と同じことをやってもダメです。
書店経営者は、ポイントでユーザーを囲い込む以外に、ユーザーがリアル書店で書籍を購入するメリットを生み出すことを真剣に考えなければなりません。
2. ターゲットを絞り込む
蔦屋書店は、意識高い系にターゲットを絞った結果、上手く行ってます。
おしゃれな飲食店や雑貨と一緒に、書籍を販売するというのはありですね。
書店という空間を提供する
蔦屋書店のように、カフェを併設するなど、魅力的な店舗を作って、書店という空間をユーザーの体験の場として利用してもらうというのもありです。
3. 書籍をキュレーションする
書店員というのは、書籍に関してめちゃ知識や見識があります。例えば、東京駅にある丸善の書店員の書籍に関する知識は半端ないですから。
このような有能な書店員の知見に基づいて、書籍をキュレーションします。
例えば、インテリアの書籍をキュレーションするとか、資格関連の書籍をキュレーションするとかね。出版社にとらわれず同じテーマに沿った書籍をキュレーションするのも効果的。
↓北海道にある「いわた書店」のキュレーションは有名です。
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4. 出版社から直接書籍を仕入れて販売すべし
書店は書籍の目利きができなければ、今後生き残っていくのは厳しいでしょう。特に大手チェーンに属さない書店はね。
中小の出版社を狙って、直接買い取りで取引をします。
当然、取次を通さないので、返本はできませんが、、取次経由よりも安く仕入れることが可能です。
売れる本をしっかりと目利きができれば、十分利益が出るはず。
まとめ
以上、リアル書店が生き残るための方法を考えてみました。
ユーザーの活字離れが起きており、ただでさえ書籍が売れない中、少ないパイを奪い合っているというのが現状です。
他の書店ではやっていないことをいち早く取り入れて、常にユーザー目線を持ったサービスを提供していくことができなければ、今後、リアル書店が生き残っていくことは難しいです。
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