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司法試験に通っていない最高裁判所の裁判官がいる件について

よもやま話

最高裁判所

最高裁判所の裁判官の中に、司法試験に通っていない方がいることをご存知ですか?

最高裁判所の裁判官に任命されるのは15名です。2017年10月現在、最高裁判所の裁判官が、どのような経歴を持っているのか見ていきましょう。

  • 裁判官・・・7名
  • 弁護士・・・5名
  • 検察官・・・1名
  • 役人(外務省出身)・・・1名
  • 役人(内閣法制局出身)・・・1名

15名の内、13名が司法試験に合格した法曹資格を持っている方です。

でもね、役人の2名(外務省出身と内閣法制局出身)は、司法試験に合格しておりません。外交官試験や国家公務員採用I種試験といった難解な試験に合格していますが、法曹資格は持っていないのです。

最高裁判所は司法権の最高機関なので、最高裁判所の裁判官が法曹資格を持っていないって、ちょっと驚いてしまいますよね?

最高裁判所の裁判官になるための資格は?

最高裁判所の裁判官になるための資格は、裁判所法 第41条 第1項で定められています。

最高裁判所の裁判官は、識見の高い、法律の素養のある年齢40年以上の者の中からこれを任命し、

裁判所法 第41条 第1項では、最高裁判所の裁判官の15人の内10人以上は、法曹資格を持った裁判官・検察官・弁護士、もしくは大学の法律学の教授か准教授と規定されています。

裁判所法の既定によれば、最高裁判所の裁判官は、15名全員が、司法試験の合格者である必要はないのです。

最高裁判所の裁判官に就任できる役人はどんな人?

外務省条約局長や内閣法制局長官を経験した人が就任します。
1994年以降は、労働省の幹部(今の厚生労働省の幹部)が就任する例もあります。

鈴木宗男氏が、衆議院議員時代に、内閣に質問主意書を提出しています。

最高裁判所裁判官の指名等に関する質問主意書

質問

三 内閣として、司法試験に合格する等の法曹資格を有していない者をこれまで「最高裁裁判官」に指名または任命したことはあるか。あるのなら、過去十年に渡るその人数並びに「最高裁裁判官」就任以前の官職等について全て明らかにされたい。

回答

過去十年間に最高裁判所の裁判官に任命された者で、司法試験に合格していないもの又は司法試験に合格していても司法修習を終了していないものは六人であり、これらの者の主な前職は、京都大学教授、特命全権大使(アイルランド国駐箚)、内閣法制局長官、東北大学教授、労働省女性局長及び外務事務次官である。

なぜ、外務省条約局長や内閣法制局長官の経験者が最高裁判所の裁判官に就任できるのか?

国際法、国内法の解釈権を持っているからです。

外務省条約局長は国際法や条約の解釈権を持っている

外務省条約局長は国際法や条約の解釈権を持っています。

国会で国際法や条約の解釈について意見が割れた場合は、外務省条約局長による国際法の解釈権に従うことになります。

内閣法制局長官は国内法の解釈権を持っている

内閣法制局長官は、法の番人と呼ばれており、国内法の解釈権を持っています。

国会で、憲法や国内法の解釈で意見が割れた時は、内閣法制局長官による解釈権に従うことになります。

外務省条約局長を経験した最高裁判所の裁判官

外務省条約局長を経験した最高裁判所の裁判官を見ていきます。

林 景一 氏

外務省条約局長を経験した外交官です。

2011年から2016年6月までイギリス大使を努めた後、2017年4月より最高裁判所の裁判官に就任しています。

竹内 行夫 氏

外務省条約局長を経験した外交官です。

2008年10月から2013年7月まで最高裁判所の裁判官に就任していました。

福田 博 氏

外務省条約局長を経験した外交官です。

1995年から2005年まで最高裁判所の裁判官に就任していました。
最高裁判所の裁判官を70歳で定年退官した後、弁護士登録しています。法曹資格はどうしたんだろうね?

中島 敏次郎 氏

外務省条約局長を経験した外交官です。

1990年から1995年まで最高裁判所の裁判官に就任していました。

内閣法制局長官を経験した最高裁判所の裁判官

内閣法制局長官を経験した最高裁判所の裁判官を見てみましょう。

山本 庸幸 氏

通産省出身の役人です。通産省での勤務より、内閣法制局での勤務の方が長いです。

2011年12月から2013年8月まで内閣法制局のトップである内閣法制局長官を努め、2013年8月より最高裁判所の裁判官に就任しています。

大出 峻郎 氏

内閣法制局の役人です。1993年から1996年まで内閣法制局長官に就任。

その後、1997年から2001年まで最高裁判所の裁判官に就任していました。

労働省出身の最高裁判所の裁判官

労働省出身の最高裁判所の裁判官を見ていきます。

櫻井龍子 氏

労働省の女性局長まで勤めた役人です。

2008年9月から2017年1月まで最高裁判所の裁判官に就任していました。

横尾 和子 氏

厚生省出身の役人です。

厚生省を退官後、アイルランド国大使を経て、2001年12月から2008年9月まで最高裁判所の裁判官に就任していました。

高橋 久子 氏

労働省出身の役人です。

1994年から1997年まで最高裁判所の裁判官に就任していました。

さいごに

以上、司法試験に通っていない最高裁判所の裁判官がいる件についてでした。