昨日のエントリーでは、図書館向けの電子書籍サービス「OverDrive」についてお話しました。
図書館で電子書籍の取扱いがあれば、貸出や返却のために図書館に行く必要がなくなるので、便利になることは言うまでもありません。
すでにアメリカでは、図書館での電子書籍の取扱いがメジャーになっています。
米国の多くの図書館はOverDriveを採用している。OverDriveはプラットフォームを問わず利用可能な電子図書館で、何百万もの電子書籍やオーディオブックが用意されている[編註:日本国内でも一部地域ではサーヴィスが導入されている]。
そして、ウェブブラウザーでOverDriveの書籍一覧を開くか、スマートフォン用のアプリをダウンロードする。そしてお目当ての本が見つかったら、「Kindleにダウンロードする」をクリックする。あとは自分のKindleがWi-Fiでインターネットにつながってさえいれば、無事にKindleに本がダウンロードされ、画面上に表示される。
図書館の本棚に置いてある書籍と同じように、OverDrive経由でダウンロードした電子書籍には利用期限がある。期限は図書館によって異なるが、物理的な書籍とは違ってわざわざ返しに行く必要がない。期限が来れば、Kidleから自然に“消えて”しまうのだ。
アメリカの図書館で電子書籍が普及している理由
OverDriveが、WIN(WANT IT NOW)というシステムを導入したので、アメリカの図書館で電子書籍が普及したと言われています。
図書館で貸出中の電子書籍の場合、返却があるまで他のユーザーに貸出はできません。また、図書館にタイトルが登録されていない電子書籍の場合、そもそもユーザーは貸出を受けることはできません。
OverDriveは、図書館で貸出中の電子書籍や、図書館にタイトルが登録されていない電子書籍に対して、ウェブサイト上に「購入ボタン」をつけました。これにより、すぐにでも読みたいユーザーは、オンラインストアで電子書籍を購入できます。また、図書館にもアフィリエイトが入ってくるという仕組みを構築しています。
OverDriveはWINプラットフォームを機能強化することで、たとえ図書館にそれらすべてのタイトルを公開する予算がなくても、多くの出版社が既刊書リストと絶版書タイトルを図書館利用者に公開できるようにした。入手可能な電子書籍を出版社別のカタログで表示するだけでなく、図書館のWebサイトと幾つかの大手オンライン書籍販売小売業者を結びつけることで、図書館はアフィリエイトプログラムにより利益を得る側に立つ一方、利用者は図書館が提供していない電子書籍を購入する選択肢を得た。
日本の図書館で電子書籍が普及していない理由
図書館に電子書籍を提供するサービスを行っている事業者が3社あるんだけど、バラバラにサービスを展開していることが大きな原因の一つです。
図書館に電子書籍を提供するサービスを行っている事業者
以下の3つの事業者が、図書館に電子書籍を提供するサービスを行っています。
- TRC 図書館流通センター
- LibrariE 日本電子図書館サービス
- OverDrive JAPAN
TRC 図書館流通センター
2010年に図書館への電子書籍事業に参入しました。3社の中では一番古いです。
元々、図書館向けの書籍販売、図書館管理業務をやっている会社です。大日本印刷や丸善が株主です。
図書館管理業務の一例をあげると、TRC 図書館流通センターは、神奈川県海老名市立図書館をツタヤと共同管理しています。2015年に両社との間ではトラブルがあったんだけどね。
神奈川県・海老名市立図書館の共同運営をめぐって対立していたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と図書館流通センター(TRC)が、そのすったもんだを謝罪する文書を海老名市の内野優市長宛てに提出し、2019年3月末の指定管理の契約期間満了まで協力して運営していくことを表明した。
一応、「TRC 図書館流通センター」「LibrariE 日本電子図書館サービス」はコンテンツの相互提供を行っているようです。
LibrariE 日本電子図書館サービス
LibrariE 日本電子図書館サービスとは、紀伊國屋書店、講談社、KADOKAWAによる合弁会社です。2013年に設立されました。
OverDrive JAPAN
2015年から事業を開始しています。
元々、「OverDrive」は、電子図書館のプラットフォームとしては、世界最大手です。アメリカでは、18000以上の図書館でOverDriveを導入しており、250万タイトルの電子書籍を揃えています。
2015年に楽天が「OverDrive」を買収し、「メディアドゥ」との共同出資により、「OverDrive JAPAN」を運営しています。
まとめ
「TRC 図書館流通センター」「LibrariE 日本電子図書館サービス」「OverDrive JAPAN」とプラットフォームがバラバラだと、日本の図書館で電子書籍が普及するのは難しいよね。
しかも、「TRC 図書館流通センター」は大日本印刷グループだし、「LibrariE 日本電子図書館サービス」は紀伊國屋書店、講談社、KADOKAWAでしょ?書籍流通の既得権益を持っている会社なので、利用者の利便性は後回しにしている感じがします。
今の状況が続くと、日本の図書館で電子書籍が普及することはなさそうです。
その間に、Amazonが図書館に電子書籍を提供するなんてことになったら、3社とも共倒れになるんだろうね。
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